第3話

復活した国産黒文字の製造現場

取材・文 長友麻希子

「黒文字」のルーツを訪ねて

② 幻の「国産黒文字」

河内長野市の中心街から車を走らせて10分ほど。のどかな田園風景が広がるエリアにやってきました。ここに、国産黒文字の生産を復活させた菊水産業株式会社さんの工場があります。

河内長野周辺は、もともとクロモジやウツギがたくさん自生していたことから、黒文字やつまようじの生産地として発展した地域です。昭和初期には全国一の産地として名を馳せたそうですが、残念ながらいまはほとんどが安価な外国産にとって代わられてしまっています。いつのまにか材料のクロモジも入手困難になりました。

お釈迦様に始まり、伝統的な日本の菓子楊枝として発展をとげた黒文字ですが、そんなわけで長年、もはや国産は手に入らないとされていました。それが今年、菊水産業さんの努力によってついに復活したのです。

クロモジの木

国産黒文字の製造現場に一歩足を踏み入れると、なんとも爽やかなよい香りが。

クロモジができるまで

黒文字作りは、まずクロモジを洗い、節のない部分を選んで切ります。黒文字に欠かせない樹皮をつけたまま木を割り、さらに厚みと幅を一定にしていきます。四角く整ったら、長さを揃えて切ります。先端を三方から三角になるように美しく削るのがポイントで、もう一方の端は2ミリほど樹皮を落とします。完成までの工程は比較的シンプルに見えますが、不揃いな自然素材を加工するため、丁寧な職人技が要求されるのだそうです。

和菓子は、まさしく日本文化を象徴する食べもの。いつか国産の黒文字ですがすがしく和菓子をいただく日が当たり前になるといいなあ……なんて思った一日でした。

ちなみに菊水産業さんの黒文字やつまようじのブランドネームは「楠木楊枝(くすのきようじ)。」クスノキ科のクロモジを素材に使うから?と質問したら、創業したご先祖が、地元のヒーロー楠正成公の大ファンだったから……との答え(笑)。

菊水産業株式会社の末延秋恵さん、田畑雅之さん、ありがとうございました。

リンク:菊水産業株式会社
http://kikusuisangyo.co.jp/